2012年9月16日日曜日

残酷なこの世界で。

 昨日悲しいことがありました。それは散髪に行き、近くのマックで昼飯を持ち帰るときに起きたのです。
 
 前々からずっと食べてみたかった激辛ペヤングカレー味。それを探しにセブンイレブンへ。激辛ペヤングと言えばセブンイレブン。とりあえず激辛ペヤングが見つからなかったらセブンイレブンに行けばいい。セブンイレブンにはいつも激辛ペヤングが置いてあるのだから。そんな世界に僕は住んでいたのです。ですが、その世界は既に音も無く崩れ去っていて、そこには通常の、無垢な白い姿、ノーマルペヤングしか置いていなかったのです。

 僕は動揺を隠せないまま、カップラーメンコーナーの前で立ち尽くしていました。現実を受け入れるのに数分はかかったでしょう。震える膝をなんとか動かし、コンビニを後にしました。

 激辛ペヤングカレー味どころか、激辛ペヤングが置いてない。セブンイレブンに激辛ペヤングが置いてない。それは、アダムとイブがいるべき場所に、アダムしかいない。いや、アダムすらいないのです。あぁなんてこと・・・。目眩が襲いかかりました。視界は揺らぎ、おぼつかない足取りで散髪へ向かったのです。

 数十分の散髪を済まし、ようやく落ち着いて来ました。しょうがない。激辛ペヤングは少数にしか選ばれることのないエリートカップ焼きそばなんだと、最悪アマゾンで買えるじゃないか、何度も何度も自分に言い聞かせ、マクドナルドへ。

 自分の分と弟の分を注文し、持ち帰ろうとしました。

 「あ、そういえば、あそこのラーメン屋、最近言ってないな」

 マクドナルドの近く、歩いて数分のところにお気に入りの旨くて安いラーメン屋がありました。初めて入って、味の虜になり、高校時代には度々足を運んで、醤油ラーメンと、とんこつラーメンと、塩ラーメンを代わる代わる食べていました。どれも美味しかった。ラーメン屋はここさえあればいいと思っていたのです。

 目を疑いました。ラーメン屋があるべき場所に、薬局と書かれた看板が置かれていたのですから。嘘だ。これは何かの冗談だ。そう思って店内を覗いたのです。そこには清潔感溢れる白い壁と、白衣を着た人間がいるではないですか。紛れもなく、薬局になっていました。厨房は薬の倉庫になっていました。あそこで作られていたラーメンはもう、どこにもなくなってしまったのだと、瞬間的に理解できました。

 そこから僕は記憶がほとんどありません。どうやって家に帰ったのかも、マクドナルドで買ってきたハンバーガー達を食べたのかも、昼寝をしたのかも、夕飯のカレーを食べたのかも、DOTA2の前にちょっとテラリアやるか、なんて思って気がついたら夜明け前になっていたのかも、何も覚えていません。

 時間の流れは残酷です。美しい世界を、音もなく奪い去ってしまうのですから。そんな残酷な世界を、残酷な時の上を、僕らは歩いて行くしかありません。それが人間に担わされた、十字架なのですから―――。

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